どもらないための吃音治療はダメ!
どもることを悩む人にとって、「どもる」ことは、しばしば「失敗」を意味します。どもることで、自分に対する周囲の評価が落ちてしまうと思っている吃音者も多いかと思います。
過去のどもった経験は、恥ずかしさや落胆、口惜しさなど、失敗やショックな経験として記憶に残っている場合が多いものです。そのため、吃音治療の目的や目標を「どもらないこと」に置くのは至極当然なことといえるでしょう。
しかし、ここでよく考えたほうがよいことがあります。
「どもる」ことを、「失敗」と考えている吃音者にとっては「どもらないこと」は「失敗しないこと」を意味しますが、果たして「どもらない」ことを目標にした治療やトレーニングであなたが本当に望んでいる「思い通りのスムーズなしゃべり」が手にはいるかどうかは疑問です。
「どもらなかった」体験は、あなたにつかの間の安堵感を与えてくれたことでしょう。しかし、どもらなかっただけで、本当に自分の思い通り満足いくようなしゃべりが果たしてできたのでしょうか? そつなくその場を切り抜けることができたからあなたはそれで満足なんでしょうか?
本来の吃音治療の目標は、「理想通りのスムーズなしゃべりを身に付けること」つまり「成功」を意味します。ところが「どもらないこと」つまり「失敗しないこと」を目標にしていると、あなたは絶えずどもって恥ずかしい、悲しい思いをした経験を記憶に呼び戻し再体験することになってしまいます。吃音から解放されるどころから、かえってどもりやすい不安な状態を作ってしまいがちです。
『「失敗しないこと」=「どもらないこと」』と『「成功すること」=「スムーズにしゃべること」』とは、一見同じことのように思えますが、実は手に入る結果に大きな違いがあることを知っておく必要があります。
「どもらないようにするため」の方法をいくらトレーニングしても、それはあくまでも「どもる」ことへの不安や恐れを解消したいがために、一時的なその場しのぎの方法を身に付けることにしかならないかもしれません。
実際の場で本当にあなたの望むスムーズなしゃべりがしたいならば、「成功」するための方法をしっかり身に付ける必要があります。