吃音診断起因説
現代でも影響力を持っている原因論に、 アイオワ大学のW.Johnson博士が1942年に提唱した「診断起因説」があります。 これは、吃音の原因は親、主に母親にあるとするもので、 無理に矯正しようとかかかわったために吃音が生じたとする説です。
ウェンデル・ジョンソンは「吃音はこどもの口から始まるのではなく、親の耳から始まる」と言いました。吃音といわれる子の、ことばを繰り返したり、引き伸ばしたりする話し方は、この頃の子ども(2、3歳)に共通した正常な範囲のことばのなめらかさの不足であるとし、その話し方に対して両親、特に母親が『吃音』というレッテルを貼ってしまう。そのレッテルを貼った後、つまり、『吃音』と診断した後から、吃音が起こると説明しました。
この説は、精神衛生上、好ましい親子関係を作ることの大切さを指摘し、子どもにどう接してよいかわからなかった親に、好ましい接し方を提示したことで、吃音児指導に大きな影響を与えました。しかし、親が誤ったレッテルを貼ったことが原因であるとは言いきれない場合もあります。たとえば、親は全く意識していないという例は多く、原因論としては、そのままあてはまらない場合も少なくありません。また、この説を安易に臨床的に応用すると、「吃音は母親が作った」ということになり、治らなかった場合、母親を責めることになり、母親を不必要に苦しめる恐れもあるのです。