吃音 吃音エビデンス資料

吃音者に社交不安障害

更新日:

社交不安障害とは

社交不安障害Social Anxiety Disorder: SAD)あるいは社交恐怖は、愚かに見えないか、場に合っていないのでは、というように他人に辱められることに強い不安を感じるために、社交状況を避けたり、耐えたりすることによって、相当な苦痛がある、または生活に重大な支障があるという精神障害である。対して、正常な内気は、単に知り合いのいないパーティを怖がるといったものである。対して社交不安障害では、そうした社交状況においてほぼ毎回、動悸、下痢、発汗、時にパニック発作といった不安症状が起こる

*2008年に日本精神神経学会は、「社会」から「社交」へと訳語を変更した。

治療は、認知行動療法が優先され、薬物療法では選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であり、反応が部分的である場合にこれらが併用される。子供や若年者での薬物療法や、大人でのSSRI以外の薬は推奨されない。

*フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用

 

吃音と社交不安障害

吃音者は社交不安障害(SAD)を高い割合で併発することが報告されています。

2010年、オーストラリアのエレーヌ・ブルームガルトらの報告によると、成人吃音症の40~50%が社交不安障害を合併しているとされています。一方、一般の人で社交不安障害のある人は人口の10%程度だとされています。したがって、吃音症の人は一般の人より4~5倍という高い割合で社交不安障害があるということです。したがって、吃音症の人は一般の人より4~5倍という高い割合で社交不安障害があるということです。

以下、国内の関連論文を見つけましたので、ご紹介します。

吃音に併存する発達障害・精神神経疾患に関する検討

音声言語医学 57(1), 7-11, 2016

吃音は社交不安障害などの精神神経疾患や発達障害が併存しうることは指摘されているが、これらの併存疾患に関する本邦からの報告はいまだ少数である。そのため、本邦における吃音と併存疾患との関連を検討することを目的に、2012年と2013年に慶應義塾大学耳鼻咽喉科を受診し吃音と診断された39症例について、併存する精神神経疾患および発達障害の有無を調べ、性別、年齢、発吃年、,吃音頻度との関連を後方視的に調査した。

併存する精神神経疾患として、気分障害(うつ,適応障害)、強迫神経症、てんかん、頸性チックの合併を全体の15%に認めた。発達障害の併存は、疑い例や言語発達障害のみの症例を含め18%に見られた。発達障害の有無によって吃音頻度、性別、年齢に有意差は見られなかったが、発吃年齢は発達障害併存群で有意に高い結果だった。吃音は発達障害が併存することにより、発達障害を併存しない吃音とは異なった臨床経過を示す可能性が示唆された。

吃音症における社交不安障害の重症度尺度(LSAS-J)の検討

J-STAGE(独立行政法人科学技術振興機構)耳鼻と臨床 63(2), 41-46, 2017

吃音症は成長していくにつれ、表面上の吃音は軽減したようにみえる。しかし、吃音を隠す努力を行うことで、思春期・青年期に社交不安障害(SAD)を合併することがある。 そのため、吃音症における社交不安障害の合併とその性質を把握することが必要である。

本研究では、2011 年から 2016 年まで九州大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科に吃音を主訴に来院した 100 名(平均 24 歳、男女比 3.7:1)に、社交不安障害の重症度尺度である LSAS-J を記入したものを解析した。年代で比較すると、10 代、20 代に比べて、30 代は有意に LSAS-J の値が低下していた。性別差を検討すると、10 代のみ女性が男性よりも有意に LSAS-J の値が高かった。また、成人吃音者では、50%が SAD に相当した。以上より、吃音を主訴で来院する場合は、表面上の吃音だけではなく、SAD の合併の有無を考えて診療する必要があることが示唆された。

社交不安障害 ( SAD) を合併した発達性吃音症の1

音声言語医学 54(1), 35-39, 2013-01-20

成人の吃音患者に,社交不安障害(social anxiety disorder,以下SAD)が40%以上もの高い確率で合併する(Blumgartら,2010)。SADにおいては、人と接する場面で強い不安を覚えるばかりでなく、社会生活上に大きな支障を及ぼす可能性があり、精神科・心療内科で薬物療法を行われることが多い。しかし,吃音にSADが合併している場合は、吃音をよく知っている言語聴覚士とも協力したほうがSADから回復し、従来の生活に戻れる可能性が高まる。

症例は16歳男性、授業で本読みをすることに恐怖を感じ、不登校となった。心療内科でSADと診断され薬物療法を受けるが、本読みのある授業は欠席していた。耳鼻咽喉科に紹介され、環境調整、言語療法、認知行動療法を併用した結果、3週間後に授業を欠席せず登校可能となり、通常の高校生活に戻ることができた。吃音症にSADが合併した症例は、医師による薬物療法だけではなく、耳鼻咽喉科医・言語聴覚士の積極的介入が有用であると考えられた。

 

-吃音, 吃音エビデンス資料
-

Copyright© 吃音改善に役立つワンポイントレッスン&情報発信 , 2024 All Rights Reserved.