昨晩、サイエンススペシャル フランケンシュタインの誘惑E+「モンスター・スタディー」を見ました。「吃音治療の父」と呼ばれた有名な心理学者が地位、名誉を守るために行った卑劣な行為に驚愕しました。今回はそれをご紹介します。
モンスター・スタディー
モンスター・スタディーとは、1939年に米国アイオワ州ダベンポートで、アイオワ大学のウェンデル・ジョンソンの監修により行われた吃音症(言葉がスムーズに出てこない症状)に関する実験です。
米国アイオワ大学の心理学者ウェンデル・ジョンソン博士は、22人の孤児たちを集めて2つのグループに分け、それぞれに真逆の「指導」を施します。一方のグループに対しては喋り方が適切であることを褒め、他方のグループに対しては少しでも喋り方がおかしいとそれを指摘し、吃音症が原因であると告げるのです。
その結果、ネガティブな指導を受けたグループの一部は、もともと何の問題も無かったのに、実験が与えた心理的効果によって吃音症に苦しむようになりました。しかも、その症状は実験の後も治ることは無かったのです。
この実験結果は「診断起因説」を証明することができなかったため、ジョンソンは論文を大学の図書館に62年間隠ぺいしてしまいました。
ちなみに、「モンスター・スタディ」という名前は、この実験の残酷な面を捉えて、ジョンソンの同僚が付けたと言われています。実験が行われた時期がちょうどナチによる人体実験の開始時期と重なっていたため、ジョンソンの評判に傷が付くことを恐れてモンスター・スタディの存在は隠されていました。
アイオワ大学がこの実験について公式に謝罪したのは2001年のことです。2007年、成長した6人の元孤児たちはその実験の責任者であったアイオワ大学に訴訟を起こした。アイオワ大学は謝罪し、彼らの生涯にわたる精神的被害に対し、92万5000ドル(約1億4000円)の慰謝料が支払われました。
臨床実験
人間の心理を深く知るために、研究者は人間を被験者として臨床実験を行うことがあります。今日、私たちが用いる倫理基準は、1970年代、研究者たちがボランティア被験者の身の安全とプライバシーを守るために作成した「ベルモント・レポート」というルールに基づいて行われています。しかし、歴史に残る心理学の臨床実験の多くは、今日の基準では非倫理的とされるものでした。
その一つが、ウェンデル・ジョンソンの指揮により行われた「モンスター・スタディー」と呼ばれる実験です。
ウェンデル・ジョンソンはただ孤児というだけで、子供たちを実験室のネズミ同然に扱ったのです。それはどんな時代でも許されることではありません。子供たちは最後までこの実験の目的を知ることはありませんでした。1930年代アメリカ、子供たちを精神的追い詰め、無理やり吃音にしようとした残酷きわまりない実験が行われていたのです。
ウェンデル・ジョンソが犯した罪
自らの学説を守るためにジョンソンが犯した罪
1.人道上の罪
2.科学者としての罪
3.意にそわないデータを無視、更に研究そのものを隠蔽しようとした罪
<ウェンデル・ジョンソンの「診断起因説」>
現代でも影響力を持っている原因論に、 アイオワ大学のW.Johnson博士が1942年に提唱した「診断起因説」があります。 これは、吃音の原因は親、主に母親にあるとするもので、 無理に矯正しようとかかかわったために吃音が生じたとする説です。
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吃音診断起因説
吃音診断起因説 現代でも影響力を持っている原因論に、 アイオワ大学のW.Johnson博士が1942年に提唱した「診断起因説」があります。 これは、吃音の原因は親、主に母親にあるとするもので、 無理に ...
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