「隠れ吃音」という言葉が世間で聞かれるようになったのはいつごろからのことなのでしょうか?
そもそも、「隠れ吃音」とはいったい何を意味しているのか、それすら定かではありませんが、どうも一見しただけでは「吃音者」とはわからない人を指しているようです。
機能性吃音と場面性吃音
吃音の分類の仕方にはいくつかありますが、その一つに「機能性吃音」と「場面性吃音」の二つに分ける方法があります。
機能性吃音は、いつ、いかなる場面でもどもる、または子供から高齢者まで、誰の前でも同じようにどもるものを指します。特に場面や人物を選ぶことなく、特定な語はいつでも同じようにどもるものを言います。
一方、場面性吃音は、誰もいないところで一人で朗読したりするときはほとんどどもりません。家族や親しい人たちとの会話ではどもらない、どもるのは、「どもりそうだ」と予期不安が発生する時で、その人が苦手だと意識している対人関係や場面においてだけです。特定の音や言葉を恐れているというより、話さなければいけない場面をより恐れるものを指します。
隠れ吃音は場面性吃音とイコール?!
機能性吃音の人は、いつでもどんな時でもどもりますから、第三者からすぐに吃音者であることがわかりますが、場面性吃音の人は、特定な場面でしかどもらないので、非吃音者には吃音者であることがなかなかわからないと思います。今時の言い方からすると、場面性吃音者がきっと「隠れ吃音者」のことに違いありません。
ところで、隠れ吃音者の吃症状の特徴の一つに「難発」をあげることができます。吃症状は一般的に連発、伸発症状から始まります。繰り返しや伸発ははた目から見ても目立つため、いつの間にかそれを抑えるために構音器官に力を入れて一時的に発声を抑える行為が定着していきます。それが難発です。難発症状が主体の吃音者であれば、周囲の人はなかなか吃音者であることに気がつかないかもしれません。まさにこれが「隠れ吃音」でしょうか…
さて「隠れ吃音」専門的に言えば「場面性吃音」の人は、日常の会話時は特に困ることはあまりなくて、特定の場面(電話の第一声、自己紹介など)や特定な言葉(ありがとう、おはようございます、お世話になりますなど)だけ詰まることが多いです。
こうした場面では、必ず周囲の人たちを意識して「詰まらず言えるかな?」という不安に襲われて身構えていることが多いものです。隠れ吃音、場面性吃音の人たちは「どもる」ことへの不安や恐れが強く、その緊張感がより一層スムーズな発語にブレーキをかけてしまっていることは明らかです。
したがって、隠れ吃音、場面性吃音の人たちの治療には、特定な場面や言葉に対する不安や緊張を軽減、解消する方法を取り入れる必要性が高いと言えます。