吃音は発達障害
日本では吃音が2005年から発達障害者支援法に含まれるようになりました。吃音症は発達障害に含まれており、精神障害者保健福祉手帳を通じて、行政の福祉サービスを利用できるとされています。
アメリカでは日本の15年も前となる1990年制定の「障害を持つアメリカ人法」で吃音を障害として扱っています。正式な名称は「障害に基づく差別の明確かつ包括的な禁止について定める法律」です。雇用時において身体や精神の障害を理由とする差別的取扱いを行うことを禁ずるものです。
<発達障害とは>
発達障害と呼ばれるグループには自閉症スペクトラム障害、アスペルガー症候群(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)などが入ります。わが国では選択性緘黙やチック、吃音も入っています。
なおアメリカでは吃音などは入っていませんが、知的障害、脳性麻痺、てんかんが入っています。
発達障害とは「発達の途中で明らかになる行動やコミュニケーションの障害で、根本的な治療法はありませんが、適切な対応により社会生活上の困難は軽減することの出来る障害」と考えられています。発達障害は、生活の中でいつも「障害」を表に出しているのではなく、状況によって障害が明らかになるという特徴があります。しかし障害者総合支援法での「知的」「運動」「精神」の障害は、場面によらず常に「障害」を示すということになっています。
吃音者は、四六時中どもっているわけではありません。会社勤めも、仕事もできている方がほとんどです。ただし、電話で社名が名乗れなかったり、挨拶ができない、会議で意見を言うことができないなど、その症状を周囲の人に理解しておいてもらえていないと仕事上に支障をきたすことも多々あります。しかし、家族の前や緊張がない時、ひとりごとではスムーズにしゃべれることが多いのも吃音の特徴のひとつです。
吃音を周囲の人にわかってもらいたい派、それとも知られたくない派?
2014年7月国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報支援センターが吃音を発達障害の定義に加えたことや、内閣府の政府広報が吃音が発達障害であると告知したことに、賛同する派と反対する派に分かれているようです。
発達障害は精神障害の一部に紐づけられているので、吃音症とドクターに診断されれば、それは発達障害であり、精神障害の烙印を押されたことなりかねません。
吃音者に「精神障害者保健福祉手帳を申請したいですか?」と質問してみたところ、「ノー」と答えた人が圧倒的に多かったです。「障害者」というレッテルを貼られることへの抵抗感を持つ方が多いのも事実のようです。
自分の吃音を周りに分かってもらいたい派であれば、精神障害者保健福祉手帳は客観的に自分が吃音であることを証明してくれるものになりますし、所得税や住民税など控除を受けられるものもあるので、そういうことを望まれている方にはメリットとなることでしょう。
逆に、吃音であることを周囲に知られたくない派は、精神障害者保健福祉手帳を仮に手に入れた場合もそれを知られたくないようです。なぜなら手帳の名称そのものを受け入れたくない思いがあるからのようです。
吃音の人の症状の程度や、置かれている状況は様々です。悩みの深さや苦しみもみな違います。「精神障害者保健福祉手帳申請」に関しての思いや価値観もまた人それぞれでしょう。「精神障害者保健福祉手帳」を手に入れた人も、そうでない人も、自分の選択により現状よりも吃音問題が軽減されて、社会生活が少しでも向上されたとしたら、きっとその選択はあなたにとって間違っていなかったのかもしれません。