挨拶が言えない
どもることを気にしている人で、短い挨拶が言えないで困っている人は多いものです。
朝の挨拶の定番「おはようございます」
仕事終わりに「お疲れさま」「お先に失礼します」
何かにつけて言う機会の多い言葉「ありがとうございます」
店員さんなら必ず使う「いらっしゃいませ」
ビジネスフレーズ「いつもお世話になっております」など。
上の例に挙げたフレーズはみな第一声が母音でした。とりわけ母音が出ずらい吃音者にとっては、苦手な挨拶です。
これらの挨拶は、日常で頻繁に使われるフレーズですが、吃音者にとってはこれらのフレーズを言わなければならない場面はとても苦痛で、言う直前まで心の中でリハーサルを繰り返したり言う準備をしています。そして、いざ言う場面では、言わずに避けることができないので緊張しながら何とか言おうと頑張ることになります。
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挨拶の場面で
吃音の人は、日常の短い挨拶が特に苦手です。「ありがとうございます」「おはようございます」「お疲れさまでした」「お先に失礼します」などの短い挨拶のことばがどもらずスムーズにタイミングよく言えるかどうかい ...
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感情をこめてこそ、本当の挨拶
本来、上に挙げた挨拶のフレーズは、その場の状況に自然に身を置いていればおのずと口から発せられる言葉です。
非吃音者は「おはようございます」や「ありがとうございます」を言葉として言おうとしている意識は全くないと思います。
朝、出先で近所の顔見知りの人に出会えば自然と「おはようございます」が口をついて出てしまいます。お天気が良いときなどは気持ちの良さから「おはようございます」に明るい、軽快な感情が言葉に乗っていきます。こういう挨拶ができた時は、相手からも笑顔と気持ちの良い挨拶が戻ってくるものです。
このように、言葉には本来感情や与えたい印象などがちゃんと込められてこそ、「ちゃんとしゃべれた」ことになると思います。第一声が詰まらず出るかどうか、言いよどむことなく滑らかに言えるかどうかにだけ関心を向けてしゃべったあなたの挨拶には、もしかしたら全く感情や気持ちが入っていないかもしれません。聞き手は、あなたのしゃべりよりむしろあなたの不自然さに気がつくかもしれません。
一方、あなたはひどく硬い表情で、ぶっきらぼうに挨拶している自分の姿にはあまり気づいてはいないのかもしれません。
挨拶はコミュニケーションの基本です。吃音者が「挨拶がちゃんとできないなんて社会人として失格だ!」と思って、挨拶がちゃんといえるかどうかが気になるのはよくわかります。しかし、本来『言葉の前に感情、気持ちあり』なのです。感情や気持ちが言葉に乗って発声されていくものなのです。言葉をただ言おうとしているからなおさら自然に声が出て来ないのです。
吃音者の方でも、「落ちましたよ」とか急に見知らぬ人に声をかけられ、落とし物を手渡された時などは自然に「ありがとうございます」と声が出ていたというような経験をしているものです。つまり、事前に言えるかどうかと身構えることで、肝心な気持ちの流れにストップがかかり、感情抜きの言葉だけの挨拶を言うことになってしまうのです。
たとえ、少々つまずきながらでも気持ちや感情のこもった挨拶ができたなら、聞き手はあなたの発した言葉そのもの(どもっているかどうか)よりもあなた自身に注意や関心(感じの良い人だな~、一生懸命で気持ちよいな~)が向くものです。
大事なのは挨拶の言葉がどもらずスムーズに言えたかどうかより、いかにあなたの感情や気持ちをその言葉を通して表現できたかどうかが大事なのです!