吃音 吃音エビデンス資料

吃音のカミングアウト

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毎年、コミュニケーション障害学会の学術講演会がこの時期には行われます。地方大学で行われることも多くてなかなか参加できないのが実情です。

先日、予稿集が送られてきたので、目を通しました。私は言語聴覚士ではないので、吃音以外の障害を治療することはほとんどありません。資料等が送られてくるといつも、吃音治療や研究に携わっている人々から最新の情報を入手できないものかと目を光らせています。

今回の講演会で「吃音のカミングアウトの有効性」についての講演が予定されているようです。大変興味深い内容なので聞いてみたいところですが今回も参加できないので残念です。

 

講演

 

私も長年吃音指導をしてきた中で、「吃音を公表する」ことを勧めることがよくありました。しかし、今回の「カミングアウト」という言葉には少し違和感を覚えました。もちろん、カミングアウト=公表として使用しているのだとは思うのですが... というのも、私自身は吃音を障害、マイナーなものとあまり認識していないからかもしれません。確かにコミュニケーション障害学会の会員ではあるのですが、あくまでも吃音問題に関する情報収集に役立つのではないかという思いから所属しています。

ところで、この「カミングアウト」(英: coming out)という言葉は、これまで公にしていなかった自らの出生や病状、性的指向等を表明すること。自分が、社会一般に誤解や偏見を受けている(同性愛者などの)少数派の主義・立場であることを公表すること。とあります。

私は、吃音者の方に吃音を公表することを勧めることがありますが、それは、吃音者=障害者であることを公表することを意味していません。

非吃音者は、緊張して言葉を噛んだり、言い及んでしまったとき、気軽に「イヤー、緊張しちゃった! あがっちゃった! 恥ずかしかった!」とか、その時の自分の気持ちを素直に表現することが多いと思います。吃音者も同じで、自分の今の状態(言葉につまる、うまくしゃべれないなど)をありのままに受け入れて、「ちょっと緊張するとうまくしゃべれないことがあります、吃音があるので聞き苦しいかもしれません」など、その時の素直な気持ちを相手に伝えることこそ、黙って相手に不審がられるよりずっと現実的なコミュニケーションの取り方ですよと伝えてきました。

そういう意味で、「吃音を公表する」とは、「自分は吃音者です」と、周囲の人に認識してもらうことを意味していません。「吃音を受け入れる」ことが本当にできていなければ、吃音者であることを公表したところで、それはただの儀式のようなもので、少しも気持ちは楽にはならないと思います。非吃音者のようにありのままの気持ちを自然に吐露することができるようになってこそ、真に吃音を公表したことになるのではないでしょうか。そして、そうできた時こそ、あなたはきっと公表して良かったと思えるはずです。

 

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