話し言葉を司っているブローカ野
大脳(たいていの人は左脳)には、言葉を受け持っている「言語領域」という部分があります。その領域には「ブローカ野」と「ウェルニッケ野」という領域があります。
ブローカ野は、運動性言語中枢とも呼ばれ、左脳前頭葉の端に存在しています。言語処理、及び音声言語、手話の産出と理解に関わっています。主に言語処理、特に「自分から発話する場合の言語処理」を担っています。脳の中で話そうという意図や、その内容が作られ、それが形式を整え、話すための運動プログラムが出来上がり、運動の中枢経路を通って、喉、口、唇、舌などの発声、発語器官を動かして言語を発する指令を送るという重要な役目を負っている領域です。
例えば、ブローカ野が脳出血や脳梗塞、怪我などで壊れてしまうと、発声、発語に必要な筋肉に麻痺や障害がなくても、声を言葉に組み立てて話すことができなくなってしまうことはよく知られていることです。
ブローカ野の血流減少が吃症状の原因か
このように、スムーズなしゃべりのためには左脳の言語中枢、とりわけブローカ野という領域が深く関わっていることは以前から周知の事実でした。今回、さらに吃音のどもる症状が起こっている際のブローカ野の領域の状態が研究されている論文を見つけましたので、簡単に紹介しておきます。
科学、健康、医学、技術に焦点を当てた最高のオンラインニュースを配信するEurekAlert!は、2017年1月に、ロサンジェルス小児病院の主任研究員Bradley Peterson、MDが子供と大人の吃音による発話障害の原因を研究した結果、ブローカ野の領域への血流の減少が関連していることを発見したという研究報告を紹介しています。
この研究はさらに南カリフォルニア大学のピーターソン教授らにより深められました。彼らは核磁気共鳴スペクトロスコピーを使って、大人と子供の吃音の両方の脳領域を調べる研究を発表しました。
これらの研究により、ブローカ野領域への血流は吃音の程度と逆相関していて、吃音が重度であるほど、脳のこの部分への血流が少なくなったことが明らかになったと報告されています。
原文はこちらをご参照ください。
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-01/chla-slt010317.php
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