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吃音大脳半球優位説

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大脳半球優位説  Orton-Travis  Webster

1931 年に、オートンとトラヴィスは「大脳半球優位説(Orton-Travis理論)」を発表しました。

「大脳半球優位説」では、吃音者はこの大脳半球間の優位性の確立が欠如しており、両半球が同じ位の機能的な優位性を持っていると仮定しました。そして、右脳と左脳の双方が同時にしかも微妙に異なったタイミングで運動指令を出すために混乱し吃音が生じると考えたのです。その頃は脳機能を調べる機器はありませんでしたが、近年の脳科学では大脳半球優位説を支持する結果が得られています。「大脳半球優位説」は、その当時の吃音の原因に関する画期的な理論として取り上げられました。

そして、吃音を持つ人は、大脳半球の優位性が確立していないので、両手利きや左利きが多いと仮定したわけです。ところが、次第に吃音と利き手矯正に関連性がないことが証明されていき吃音を持つ人と持たない人との間で右利き、左利き、両手利きの人の出現傾向に相違は認めらなかったことから、大脳半球優位説は否定され、「過去の理論」として次第に忘れ去られていきました。

また、この理論から吃音の原因に「利き手矯正説」が生まれました。そして、左利きを矯正された吃音のある人を元の左利きに戻したら、たまたま吃音が回復したのです。その経験があり、アメリカで利き手矯正をやめようという社会現象も起きましたが、吃音になる人の数は減りませんでした。吃音と利き手矯正について、その後の多くの研究で、利き手矯正が吃音発症と関係ないことが証明されています。

 

左利き

 

しかし、近年、Travisの時代には分からなかった大脳のより詳細なメカニズムが明らかになる中で、Orton-Travis理論を再評価しようという動きが出てきています。例えば、Webster(1993)は、Orton-Travis理論の考えを発展されたInterhemispheric Interference Model(大脳半球間干渉モデル)を提唱しています。このモデルでは、Orton-Travis理論とは異なり、吃音を持つ人は、大脳半球間の優位性は確立しているものの、両半球間の協調がうまくいっておらず、優位半球が非優位半球からの干渉(妨害)を受けやすい傾向にあると仮定しています。そして、その非優位半球から優位半球への過干渉の結果、発話の運動指令に混乱が生じ、吃音が生ずると仮定しているのです。これらは、吃音を持つ人の大脳の活性化のパターンが異なるという脳画像診断技術を用いた諸研究の知見(今泉, 2003)を裏付けるものとして非常に興味深いものです。

 

MRI
吃音:脳内の停止信号が流暢な会話を妨げるー最新エビデンス

目次1 多動ネットワークは音声の流れを妨げる2 多動が引き金として働く3 より強い繊維路 吃音の原因論のひとつに、大脳半球優位説が言及された時代がありました。 1931 年にアメリカのトラヴィスが、「 ...

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